The Extended Mind
心や認知の境界を皮膚や頭蓋骨の内側に限定せず、環境中の要素が認知過程に能動的かつ適切に組み込まれる場合、それらも認知システムの構成部分になりうると論じた論文。著者らはこれをactive externalismとして提示し、外部資源を用いた認知と内部資源を用いた認知を機能的に比較する議論を展開する。特にOttoとIngaの思考実験を通じて、常時利用され信頼されるノートの情報が、生物学的記憶と同様に信念や認知の一部として機能しうることを論じる。
気になったテーマを持ち寄って、
少しずつ学び、話して、考える小さな勉強会。
N.E.M.会 では、 参加者がそれぞれ気になったテーマや資料を持ち寄り、 発表や質疑応答を通して少しずつ学んでいます。
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また、論文・Webページ・書籍・発表資料などをひとつの「資料」として扱い、 概要・理論・用語をつないで整理していきます。
人や知識がつながり、学んだことが別のテーマへ広がっていくこと。
ひとつの分野に限定せず、さまざまな分野から面白いものを選び取ること。
大きなテーマを一度に理解しようとせず、小さな単位で少しずつ学んでいくこと。
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心や認知の境界を皮膚や頭蓋骨の内側に限定せず、環境中の要素が認知過程に能動的かつ適切に組み込まれる場合、それらも認知システムの構成部分になりうると論じた論文。著者らはこれをactive externalismとして提示し、外部資源を用いた認知と内部資源を用いた認知を機能的に比較する議論を展開する。特にOttoとIngaの思考実験を通じて、常時利用され信頼されるノートの情報が、生物学的記憶と同様に信念や認知の一部として機能しうることを論じる。
死別と悲嘆に関する構造MRI・fMRI研究を事前登録済みの手順で系統的にレビューし、脳活動・機能結合・脳構造と、自律神経、神経内分泌、免疫、心理指標との関連を整理した研究。2003~2024年の20研究を対象とし、感情調整、報酬処理、認知制御、愛着に関わるネットワークの変化に加え、海馬・扁桃体・縁上回などの構造的差異や白質異常を報告する研究をまとめている。著者らは、悲嘆特異的な機序と一般的ストレス反応を区別するため、縦断・多モーダル・前向き研究が必要だと結論づけている。
強い快感を生じさせる音楽を聴く際の内因性ドーパミン放出と、その時間的・解剖学的な違いをPETとfMRIを組み合わせて調べた研究。[11C]raclopride PETでは、快楽的な音楽条件で線条体におけるドーパミン放出が示され、同一刺激と参加者を用いたfMRIでは、ピーク感情反応を予期する段階で尾状核、ピーク快楽を経験する段階で側坐核がより強く関与する機能的分離が観察された。著者らは、抽象的報酬である音楽でも、その期待と実際の快楽経験の双方にドーパミン系が関与するが、異なる線条体領域が時間的に異なる役割を担うと結論づけている。
問題解決の熟達を支える主要因を領域固有のschemaの獲得と捉え、通常の目標指向型問題解決、とくにmeans-ends analysisが学習を妨げうる理由を論じた論文。means-ends analysisでは現在状態、目標状態、両者の差、利用可能な演算子、必要に応じてsubgoalを同時に処理するため、限られた認知処理容量の多くが問題解決そのものに使われ、schema acquisitionに利用できる容量が減ると提案する。特定目標を持たないnonspecific goal strategyとの比較を、PRISMによる最小限のproduction-systemモデルと三角法問題を用いた実験で検討し、nonspecific goal条件では問題構造や解法の再生に関する誤りが少ないことを示した。著者は、通常の問題解決を学習手段として大量に課す教育実践を再検討し、nonspecific goal problemsやworked examplesを代替として検討すべきだと結論づける。
運転シミュレータを用いて、速度制限標識による2種類のナッジが時間的プレッシャー下でも速度低減に有効かを検討した研究。実験1では89 km/hのように左端の桁を変える標識による左端数字効果を、実験2では0–90 km/hのように下限値を加える標識によるアンカリング効果を調べた。左端数字効果による速度低減は時間的プレッシャーの有無にかかわらず確認された一方、アンカリング効果による速度低減は時間的プレッシャー下では確認されなかった。著者らは、速度制限標識をナッジとして利用する際には、時間的プレッシャーがその有効性を変化させる可能性を考慮する必要があるとしている。
音楽知覚を、脳が旋律・和声・リズムなどから継続的に予測を形成し、予測誤差を用いて内部モデルを更新する過程として整理したレビュー論文。著者らはPredictive Coding of Music(PCM)モデルを軸に、予測誤差の精度重み付け、active inference、音楽学習、groove、感情と快楽、音楽的相互作用を、知覚・行動・感情を統合する枠組みとして論じる。音楽経験や文化、学習履歴によって予測モデルが形成され、音楽の予測可能性と不確実性の調整が、快楽や身体運動を含む音楽経験に関係すると整理している。
AIの教育導入を、個別ツールの採用ではなく教育システム全体の準備度という観点から整理したWorld Economic Forumの報告書。AI導入に伴う認知的萎縮、ハルシネーションと誤情報、学術的誠実性の低下、人間的つながりの侵食というリスクを整理したうえで、教育のAI readinessを4層16条件から捉えるフレームワークを提示する。さらに、各条件について制度・インフラ・教育実践・学習経験の観点から、準備状況を判断するための具体的なsignalsを示している。
病気や外傷によって家族の認知・行動・人格が大きく変化した際、身体的な死がなくても『以前のその人』との関係を失ったように経験するAcquired Non-Death Interpersonal Loss(NoDIL)を提案した理論論文。著者らは、死別を主に閉じた対人システム、NoDILを変化した相手から新しい情報が入り続ける開いたシステムとして対比し、過去・現在・未来の人物schemaを更新するContinuing Bonds Matrix Modelを提示する。臨床事例を用いて、schemaの柔軟なassimilation・accommodationが適応的対処に、過去のschemaへの固着が苦痛や長期化した悲嘆に関係しうると論じている。
学習・評価・研究において、著者性、独創性、公正さ、説明責任などを維持するための規範。本報告書では生成AIによって文章や課題を容易に生成できるようになったことで、単純な不正検出だけではなく、何を本人の学習成果として評価するかという評価制度そのものの再検討が必要になると論じている。
死別ではないものの、病気や外傷などによって身近な人物の認知・行動・人格が大きく変化し、以前のその人との関係を失ったように経験する対人喪失の概念。Yeheneらは、相手が身体的には生きている一方で『以前のその人』が失われた状態として整理し、継続する関係そのものを悲嘆の中心課題として扱う。
環境中の要素が認知過程を単に外部から支えるのではなく、認知を駆動するシステムの一部として能動的な役割を果たすとするClarkとChalmersの立場。外部要素と人間が相互作用する結合システムを形成し、その一部を取り除くとシステム全体の能力が低下するような場合を重視する。
予測と感覚入力のずれを、内部モデルの更新だけでなく行動によって感覚入力そのものを変えることで小さくしようとする予測処理の枠組み。Music in the Brainでは、音楽に合わせて身体を動かすことなどを、予測誤差や不確実性を行動によって解消する過程として説明するために用いられている。
生成AIが、事実に基づかない情報や存在しない情報を、もっともらしい形で生成する現象。本報告書では教育利用において、学習者がAI出力の正確性や出典を十分検証できない場合に、誤情報の学習や拡散につながるリスクとして扱われている。
教育システムがAIを安全かつ有効に導入するための準備条件を整理する、本報告書のフレームワーク。Enabling foundations、Institutional capacities、Pedagogical practices、Learning experiencesの4層にまたがる16の条件から構成され、技術導入だけでなくガバナンス、公平性、教育実践、学習者の経験を相互依存する要素として捉える。
AIやデジタルメディアを単に操作するだけでなく、その出力、情報源、バイアス、仕組みや社会的影響を批判的に理解し、適切に利用するための能力。本報告書では教師研修、カリキュラム、授業設計、学習成果に横断的に組み込むべき基礎的能力として位置づけられている。
対象が物理的には存在しているが心理的には不在である、または物理的には不在だが心理的には存在し続けるなど、喪失の境界が不明確な状態を扱う理論。YeheneらはNoDILと関連づけつつ、Ambiguous Lossだけでは過去・現在・未来の競合する対人schemaをどのように再構成するかまでは十分説明しないと位置づけている。
判断や評価が、事前または同時に提示された基準値(アンカー)の影響を受ける心理現象。本資料では通常の90 km/h表示を0–90 km/hとし、下限の0 km/hをアンカーとして提示することで運転速度を低下させる方法が検討されている。
AIへの依存によって、推論、問題解決、記憶、批判的思考などの認知能力を自ら使う機会が減り、それらの能力が弱まる可能性を指す概念。本報告書では、AIが思考過程を代行することで学習者が高次の認知機能を十分に働かせなくなることを、構造化されていないAI導入の主要リスクの一つとして扱っている。
課題の遂行に必要となる限られた認知処理容量への負担。本論文では、とくにmeans-ends analysisのような複雑な問題解決方略が、working memory内の情報保持、複数のproductionの選択、条件照合などに多くの処理容量を必要とし、その結果schema acquisitionなど学習に利用できる容量を減らしうるという形で扱われる。
喪失後も、失った相手との心理的・情緒的なつながりが持続しうると考える悲嘆理論上の概念。Yeheneらはこの考え方をNoDILへ拡張し、死別ではなく相手が生存したまま大きく変化した場合に、過去と現在の関係表象をどのように再構成するかを論じている。
YeheneらがAcquired Non-Death Interpersonal Lossに対して提案したプロセスベースのモデル。継続的に入ってくる対人情報、過去・現在・未来の3次元のschema、そして認知・感情・行動レベルでのassimilationとaccommodationを通じて、変化した相手との関係を再構成する過程を説明する。
人間の内部プロセスと外部環境の要素が継続的に相互作用し、一体として認知課題を遂行するシステム。本論文では、人間と外部要素が双方向に影響し合い、その外部要素を取り除けばシステム全体の行動能力が低下するような関係を、認知が環境へ拡張する議論の基礎として扱う。
認知や心的過程は脳や身体の内部だけに限定されず、外部環境の要素が適切に認知活動へ組み込まれている場合には、その外部要素まで含めて心や認知システムを構成しうるとする立場。ClarkとChalmersは、環境が単なる情報源ではなく認知過程の一部として能動的に働く場合を論じた。
重要な人物や関係の喪失に対して生じる、感情・認知・行動・身体反応を含む反応。本レビューでは、とくに死別後の悲嘆を対象とし、感情調整、報酬処理、認知制御、脳構造、神経内分泌・免疫系との関連が検討されている。
数値を判断するとき、最も左側の桁から不釣り合いに強い影響を受ける心理現象。実際の数値差が小さくても左端の数字が変わることで心理的に大きな差として知覚されることがあり、本資料では90 km/hではなく89 km/hと表示する速度制限標識に応用されている。
現在の問題状態と目標状態との差を特定し、その差を縮める操作を選択しながら、必要に応じてsubgoalを設定して解を探索する一般的問題解決方略。本論文では初心者が用いやすい方略として扱われ、問題解決には有効である一方、処理容量を大きく消費してschema acquisitionを妨げうると論じられる。
音楽を聴くことによって生じる快楽、欲求、情動的価値を報酬処理の観点から捉える概念。音楽は食物などの一次的報酬とは異なる抽象的刺激だが、Salimpoorらは強い音楽的快楽が線条体ドーパミン系の活動と関連することを示している。
音楽の進行に基づいて、次に生じる音、和声、リズム、あるいは感情的な出来事を予期する経験や過程。音楽の規則性や過去の聴取経験から形成され、Salimpoorらの研究ではピーク快楽に先立つ期待段階が尾状核の活動およびドーパミン放出と関連していた。
悲嘆や死別に伴う脳活動、機能結合、脳構造、さらに自律神経・神経内分泌・免疫系との関連を扱う研究領域。本レビューでは、感情調整、報酬処理、認知制御、愛着に関わるネットワークの変化や、海馬・扁桃体・縁上回などの構造的差異が整理されている。
中枢神経系と免疫系が、ホルモン、神経伝達物質、炎症性サイトカインなどを介して双方向に影響し合うこと。本レビューでは、悲嘆に伴う炎症反応や自律神経活動と、感情処理に関わる脳活動との関連を理解するための重要な観点として扱われている。
特定の最終目標との差を縮めるのではなく、現在の情報から計算可能な未知量を順次求める問題解決方略。本論文では「できるだけ多くの変数を求めよ」のように目標の特定性を下げることでmeans-ends analysisを使いにくくし、認知負荷を減らしてschema acquisitionに利用できる処理容量を増やす方法として検討される。
選択肢を禁止したり、経済的インセンティブを大きく変えたりすることなく、人の行動に影響を与える介入。本資料では、速度制限標識の表示方法を変えることで運転速度の低下を促す介入をナッジとして扱っている。
ある課題を遂行するとき、外部世界に存在するプロセスが、もし頭の中で行われていたなら認知プロセスの一部だと認められるような役割を果たしているなら、その外部プロセスも認知プロセスの一部として扱うべきだという考え方。拡張された心の議論で、認知の境界を場所ではなく機能から考えるための中心的な原理である。
予測誤差を、その情報がどの程度信頼できるかを表すprecisionに応じて重み付けしたもの。予測符号化では、すべての予測誤差を同じ強さで扱うのではなく、精度が高いと見積もられた誤差ほど内部モデルの更新や注意・行動に強く影響すると考える。
内部モデルが生成した予測と、実際に観測された感覚入力や結果との差。本資料の予測符号化の枠組みでは、この差が上位階層へ伝えられ、予測や内部モデルを更新するための情報として働く。
脳が感覚入力の原因について階層的な予測を生成し、実際の入力とのずれである予測誤差を用いて内部モデルを更新すると考える理論的枠組み。上位階層から下位階層へ予測が送られ、下位階層から上位階層へ予測誤差が伝達されるという構造を基本とする。
予測符号化の枠組みを音楽知覚へ適用し、旋律・和声・リズムなどの音楽構造について脳が階層的な予測を形成し、予測誤差とその精度に応じて知覚や行動を更新すると考えるモデル。Vuustらのレビューでは、音楽経験、学習、感情、groove、身体運動などを一つの予測処理の枠組みから理解するための中心モデルとして扱われている。
死別後の強い悲嘆反応が長期間持続し、日常生活上の機能障害を伴う状態。本レビューでは、過去の研究で用いられたcomplicated griefという用語も含め、DSM-5-TRおよびICD-11で用いられるProlonged Grief Disorderに統一して整理している。
問題状態を特定のカテゴリーとして認識し、その状態に適切な解法や操作を結び付けるschemaを獲得すること。本論文では、専門家と初心者の問題解決能力の差を生む主要因として位置づけられ、学習の中心的な成果とみなされる。
新しい情報に応じて、既存の認知的な人物像や関係表象を修正・再構成する過程。NoDILモデルでは、変化した相手から継続的に入る対人情報を、過去・現在・未来のschemaにassimilation・accommodationすることが適応的対処の中心課題として扱われている。
線条体において内因性ドーパミンが放出される神経化学的現象。Salimpoorらの研究では[11C]raclopride PETを用いて音楽による強い快楽時のドーパミン放出を推定し、さらにfMRIとの組み合わせから、期待段階では尾状核、ピーク快楽の経験段階では側坐核がより強く関与する時間的・機能的な分離を示した。
限られた時間内に行動や判断を行う必要があることで生じる時間的な制約。本資料では、試験への遅刻の可能性を想定させるカウントダウンタイマーによって時間圧を操作し、速度制限標識によるナッジの効果が時間圧の有無で変化するかを検討している。
N.E.M.会の内容そのものと、 そこから生まれた個人的な感想・疑問・考察は分けて残します。
少しずつ、いろいろなことを知る。
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